◎当神社では、「鎮守だより」を不定期に発行いたしております。
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鎮守だより

平成13年3月21日

 

今回は、桜の季節にちなんで「桜」に関するあれこれです。

 

 桜・「さくら」とは

 

 桜(さくら)の「さ」は、早苗(さなえ)・早乙女(さおとめ) ・皐月(さつき)・さなぶり(田植えを無事に終えたことに感謝し、 田の神を送る農耕儀礼)の「さ」と同じ意味を持ち、「穀霊」を指 すとされます。  桜(さくら)の「くら」は、磐座(いわくら=神の鎮座なさる場所。 「いわ」は堅固な、という意)の「くら」と同じ。したがって、 「さ・くら」は、「穀霊の鎮座するもの」ということになります。

 

 桜は占いの花

 

 今から780年くらい前に書かれた『宇治拾遺物語』に、

  十三 「田舎の児(ちご)桜の散るを見て泣く事」

 

 これも今は昔のこと、田舎の子供が比叡山に登っていった。ちょうど その時桜の花がみごとに咲いていたが、その桜の花に風が激しく吹いたの を見て、その子供はさめざめと泣いた。その様子を見て一人の僧がゆっく りと歩み寄って、「どうしてこのようにお泣きになるのか。桜の花ははか ないもので、咲いたかと思うとこのようにすぐに散ってしまいます。しか しながら、ただそれだけのことです。」と慰めたところ、その子供は、 「桜の花が散るのは、どうなったってかまいません。私の父の作った麦の 花が風で散ってしまって、実らないのではないかと思うと、それが辛いの です。」と言って、しゃくりあげておいおいと泣いたので、情けないことだ。

 

という話が載っています。

 この話に登場する僧や、『宇治拾遺物語』の編者は、桜の花は風流なもの、 美しいものと見ています。田舎の児は、桜の花を農作物の出来を占うものと して見ています。

 桜の花の咲く様子、散る様子で稲の実りを占うのは、全国に見られた習俗 でした。

 和歌山県西牟婁郡大搭村では、「ワセの山桜が多く咲く年は、早稲がよく 実り、オクテの山桜が多く咲く年は、オクテの稲がよく実る」と言い伝えて います。

 桜の開花によって農作業の時期を計ったものとして、「田打桜・種播き桜 ・苗代桜」などがあります。「種播き桜」は辛夷(こぶし)の花を指して言 うこともあります。

 

 桜いろいろ

 

 桜の種類や名称もいろいろあります。それを列挙してみましょう。  匂桜・熊谷桜・金平桜・雲井桜・金剛桜・普賢象桜・西行桜・一重桜・  九重桜・八重桜・虎尾桜・浅黄桜・秋色桜・布引桜・有明桜・丁字桜・  孝子桜・富士桜・法輪寺桜・伊勢桜・上溝桜・江戸桜・里桜・曙桜・  樺桜・緋桜・楊貴妃桜・塩竈桜・大島桜・山桜・大山桜・深山桜・墨染桜・  豆桜・桐ケ谷桜・朱桜・冬桜・御所桜・美女桜・奈良桜・しおり桜・  手鞠桜・枝垂桜・目白桜・寒桜・緋寒桜・彼岸桜・昭君桜・左近桜・  歌仙桜・不断桜・牡丹桜・右衛門桜・茶碗桜

等々、いろいろあります。


 

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